生命(いのち)を輝かせるコツ「腹は八分、治療は六分、お米の給水は7割」

先日、奄美大島に伝わる日本の伝統発酵飲料「ミキ」のワークショップに参加してきて以来

(ワークショップに参加したときに書いた記事はこちら→日本の伝統発酵食品「ミキ」をアーユルヴェーダで科学する

ミキを作るときだけではなくて、普段のお米を炊く時にも、それはそれは丁寧にお米を扱うようになりました。お米に意識をちゃんと向けて、丁寧に丁寧にお水を注ぎ、繰り返し繰り返しお米を拝むようにしながら研いでいきます。

そうやって、お米を丁寧に扱って炊き上げると、まあこれが見た目にもとっても美しいお米になります!

そして、夫も母も、「あれ、お米変えたの!? 今日のご飯、すっごく美味しい!!」と 言ってくれて、

できるだけ新鮮なものや、丁寧に育てられた食材を入手することも大切だけど、それらの食材たちと、どれだけ丁寧に向き合い、調理するかも、とても大切なんだと改めて実感しています。

そして、思い出したのが
「森のイスキア」 を主宰されていた佐藤初女さんです。

自殺願望のあった青年が初女さんのおむすびを食べて、自殺を踏みとどまった話はとても有名ですし、全国からたくさんの悩みを抱えた人達が森のイスキアを訪ね、初女さんのお料理を食べ、大きな気づきを得て自宅に戻り
その後夫婦仲がよくなったとか、子供がちゃんとご飯を食べるようになったとか、子供に恵まれたとか。。
そんなエピソードがたくさん残っています。

そんな佐藤初女さん、いつか会いに行きたいと思っていながら、
実際にお会いすることは叶わなかったのですが、

初女さんの本は手元にあって、改めて読み返していたら
こんなことが書かれていました。

「粗食」のきほん~ごはんと味噌汁だけ、あればいい~ 佐藤 初女

お米を炊く水加減は難しいのだけど、その加減は、何度もやってみて経験を積んで覚えるしかないの。毎回毎回、お米の状態を見てから水の量をK目れば、毎回同じようなご飯を炊けるようになる。でも、炊飯器の目盛り頼みでいると、その日の部屋の室温やお米の具合で、お米の吸水率が違うから、ごはんの硬さや炊きあがりの具合が違ってきちゃう。

<中略>

その水分量の決め方ですが、まず、炊飯器のお米の量よりも少し多めに水を入れ、30分ほど浸けておく。そうすると、お米が水分を含んで白くなってきます。その粒を少し手に取って、目をこらしてお米の色を見て吸水率を見る。ここで米粒が半分くらい白くなっているようなら、もう少し水に浸けておく。もしこの段階で十割、まっ白になっていれば水を減らします。だいたい七割程度の白さで炊くほうが、お米の炊き上がろうとする力を引き出すことができると思っています。

 まっ白になるまで、たとえば一晩浸けておくという方もいるけど、そこまでにしてしまうとお米が力を出さなくても炊ける。私はお米が力を出して炊き上がるほうが元気なごはんができ上がると考えています。この加減は、すぐにできるものではないの。それでも毎回、お米の状態を見てから炊くことを続けていれば、少しずつお米のことがわかるようになりますね。


「粗食」のきほん~ごはんと味噌汁だけ、あればいい~ 

お米がまっ白になるまで浸水させるのではなく、およそお米が7割ほど水分を含んで白くなった状態で炊くと、お米の炊き上がろうとする力を引き出すことができて、お米が力を出して炊き上がるほうが元気なご飯ができあがる!

この原理、私たちが元気に生きる秘訣とまるっきり一緒なのです。

あるベテランの鍼灸師の先生が、「腹は八分、治療は6分」と仰っていて

食事はよく、満腹まで食べるのではなく、腹八分にとどめておくのがよいと言われるでしょう?治療はだいたい6割ぐらいで終わりにするのが良いんだよと。そうすると、あとは患者さんの治癒力が働いて、患者さんの身体が自然と治すから。。と。

患者さんが痛みや不調を訴えていると、是が非でも、その苦痛を100%取りさってあげたいと、どうしても思ってしまいますが、そこで患者さんが満足いくほどに治療をしてしまうと、たいてい治療はやりすぎで、もともと体力がなかったり、寝不足が続いていたりする方などは、なかにはそこで立ち上がれなくなってしまう場合もあります。

学生時代は、実技の授業中に具合が悪くなってしまう方もときどきありました。

新米の鍼灸師の人は、どうしても一生懸命目の前の患者さんに良かれと思って、治療して、やりすぎることが多いので、ぜったいに、その場で全部治そうとしないこと。。患者さんの治る力を引き出すことをちゃんとやれば、必ずあとは本人の身体が治してくれるから。。

というのも、学生時代にもいろんな先生から、何度となく聞かされた言葉です。

とは言っても、治療を6分でやめるって、ちょっと勇気がいります。

だって、患者さんにしてはその状態はちょっと物足りなくて、あの先生もうちょっとどうにかして。。。と思ってしまう場合もあるということですから。。。

患者さんのその場での満足度と、でも最終的に、患者さん自身が元気になることが一番の治療の目的だし、患者さんも自身も心底元気になりたいと思っているわけなので、

そこは、やっぱり、人がもともと持っている元気になる力、それを引き出すために、治療はやりすぎず、控えめにする。。

これが、極意なんだと、

改めて、初女さんのご飯の炊き方を読んで、思いました。

わたしがアーユルヴェーダを学んだドクター蓮村も、自身を成長させ、幸福の拡大を体験していくのに、大切なことは、「ちょうどよくするために “いくらか抑える”」ことだと仰っていました。

十分な満足を得ようとして食べる と、どうしても食べ過ぎてしまいま す。ですから、いくらか抑えて少 なめに食べ終えます。すると、食べ 終わってしばらくしてからちょうど よさを感じ、からだは楽だし、元気 を保てます。睡眠も十分に寝ようと すると寝過ぎてしまい、心や体がだ るくなってしまいます。ですから、 寝たい気持ちをいくらか抑えて、少 し足りないくらいで起きます。する と、頭はすっきりし、体も軽く感じ ます。とても腹が立っていて、どう しても一言いいたい、という時も、 少し怒りを抑えます。そのままバー ンと言ってしまうと相手を傷つけ、 ひどい口論になり、自分も傷つけま す。さらに怒りはオージャスを破壊 して疲れてしまいます。ですから、 トーンを下げ、抑えて言うのです。 ときに、 力を出し切ることが、良いことのよ うに言われますが、それは間違って います。力を出し切ってはいけませ ん。これも、いくらか抑えるべきで す。力を出し切れば、当然疲れま す。オージャスを減らし、ドーシャ を乱し、体調を崩します。何かを一 気にやることもいけません。自身や 環境に急激な変化をもたらし、やは りドーシャを乱し、心身のバランス を崩します。何ごとも、急激になら ないように穏やかにします。力を出 し切ることや、一気になることの方 が、すっきりして良いように感じま すが、それをいくらか抑えて、力を セーブし、徐々にやる方が、自他に 優しく、良い影響を与え、結果とし て喜びを大きくするのです。こうし たことが自然に出来るようになるに は、時間がかかりますが、すこしず つ練習をしてください。

お米を美味しく炊くにも、私たちの生命(いのち)を目いっぱい輝かせるにも、コツは全く同じなのですね。

「腹は八分、治療は六分、お米の給水は7割」
私たちの元気になる力を引き出すために、「ちょっと控える」
ぜひ、心がけていきたいですね!