手を動かすことで、見えてくるもの
私が鍼灸師になったことを、生前の父は知らなくて(あの世から、きっと見てると思うけど)、父が生きていた頃は、まさかわたしも鍼灸師になるなんて、考えたこともなくて、
鍼灸師になってみて、同じ職人として、同じ一自営業者として、長いこと和菓子職人として、その道を邁進し、生業とし、昭和から平成の激動の時代の中で、
子供を4人育て、 全員大学まで出してくれて。。
いったい、どうやっていたんだろう??という疑問がわいてきました。
時代とともに、家族の形も変わり、お客さんの暮らしが変わり、ニーズが変わり。。
甘いものなら何でも欲しかった時代から、
ダイエットを意識して甘さ控えめの時代へ
小さな町工場がまわりにたくさんあり、3時のお茶菓子におだんご50本とか、大福30個とか、毎日のようにあちこちから注文があった時代から、
核家族で老夫婦2人になり、せいぜい買っても4つとか、そういうお客さんが主流になる時代まで
大きく変化していく世の中の中で、
きっと、たくさんの決断と選択があったと思うのだけど
いったい、何を基準にしていたんだろうかと。
どうやって、自分の店の味を決め、コストを計算し、そして残らないように作るには??
とか、
年によって、お米も小豆も農作物の出来も違うから、微妙な水分の加減とか、捏ねる時間とか、強さとか
たくさんの、工夫や、試行錯誤がきっとあったのだと思うのだけど、
そんな話を、今だったらたくさん聞いてみたかった。。
なので、生前の父とは、そんなにじっくり語り合うこともなかったのだけど、自分が鍼灸師になってからは、父と心の中で対話することは断然増えています。
今朝、以前グリーンサロンでも自主上映会を主宰させてもらったことのある、
サティシュクマールさんの
お金を稼ぐために働かない勇気を持て! サティシュ・クマールが考える、ローカル経済を実現するために必要なこと
この記事をネットで見つけて読んでいて、
「消費者ではなく、アーティストになるのです」
「手を使った美しいスキルを学ぶこと」
などなど、サティシュさんのメッセージがとても心に響いて、
と、同時に
武骨で、いかにも職人気質の父だったけど、もしかして、あの武骨で黙々と和菓子を作り続けていた父こそが、アーティストだったのかもしれない。。
と、思ったのでした。
そして、決して自分から進んでなりたくてなった職業ではない、和菓子職人という道で、しかも時代の大きな変化の中で、父がずっとそれを生業にし続けることができて、子供たちも立派に育てあげることが出来たのは、
もしかしたらサティシュさんの仰る、「手を使ったスキル」を持っていたからなのかもしれないと思ったのでした。
サティシュさんは、
私たちは「手」を使う時、同時に私たちの「想像力と創造性」も使うことができます。
と、仰います。
手仕事が生業だった父は、まさに、毎日「手」を使いながら、「身体」を動かしながら、「想像力」と「創造力」を育んでいたのかもしれません。
兄妹4人が全員が社会人として巣立って行ったあと、父はさらに和菓子の質を上げていっていました。お団子も機械で捏ねるのを止めて、手で捏ねるようにしたり(手捏ねは、ほんとほどよい弾力があって、めっちゃ美味しかったです)、キロ2000円もするようなこだわりの塩をあんこを煮る時に使ったり、砂糖もてんさい糖を使うようにしたり。。
それでも、和菓子の値段を上げることはしないで、
「これまで地元のお客さんがひいきにしてくれたおかげで、お店が成り立ち、子供たちを一人前に育てることができたのだから、これからはその地域のお客さんたちに、感謝のために和菓子を作るんだ」
と。「もっと、値段を上げてもいいんじゃな!?」「もっと、宣伝して遠くの人にも知ってもらったら?」などと、言ってくださる常連さんも何人もいたのですが、
父は、そんな人たちの好意を、うれしく思いつつも、いつも「地域の人達に恩返しなんだ、これ以上欲をかいても、別段欲しいものもないし。」とそればかり、繰り返し言っていました。
サティシュさんの提唱する「ローカル経済」を
父は、誰に教えられるでもなく、実践していたのかもしれません。
そして、それはやはり、当たり前の暮らしの中で、「手を動かすこと」「手間を惜しまない事」そんな事の積み重ねで、実現していくのかもしれません。
ついつい、時間があると頭ばかり働かせてしまうけど、もっともっと手を使うこと、手間をかけること、そして手の感覚を信頼すること
それは、鍼灸師として施術にあたるときはもちろんだけど、
日々の暮らしの中でも、大切にしていきたいなと思いました。
というわけで、今日は、昨日夫が、バンド仲間が自分の畑で育てた大根を、目の前で引っこ抜いたものを頂いてきたので、さっそく調理しています。
前にアーユルヴェーダのお料理教室で作ったレシピ;大根のネパール風お漬物です!
作り方は、また次の機会にお伝えしますね!
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